海の底のように静かな樹海の中を、彼はただ歩いていました。
そこがどこなのか、なぜそこにいるのか。
思い出そうとしても、記憶のメモ帳は少しずつ白紙に変わっていきます。
不安の中…何とか引き止めた記憶は、自分の名前とその身分。
自分が、一国の王子であるという事実でした。
出口を求め歩いていた王子は、千名希という風変わりな少女に出会います。
彼女もまた記憶を失っていましたが、別の世界から来たようです。
そうそう、王子にはもう一つ確かな事が残されていました。
それは………とても『エロい』ということ!
恋心は解らないくせに女好きという、タチの悪い男なのです。
千名希にもとんでもない事をしてしまい、第一印象は最悪なものに。
不思議な妖精ハナのお陰で、森を出た一行は王家の屋敷へ。
王子は、空白の一年が過ぎていた事を知らされます。
そして、会話を重ねるほどに気付く感情表現の不自由さ。
自分がどんな人間なのかもわからず、伝えたい事を思うように伝える事もできない。
深刻な境遇…かと思いきや、さすが王子。大物です。
そんな事はどうでもよく、エロい事ばかり考えていました。
そんなちゃらんぽらんな王子に、王は言いました。
「王位継承の儀が近付いている。候補の者として、ふさわしい振る舞いをするように」
平和なはずの世界に起こり始めた異変。
限られた者だけが使うことのできる力『血鳴』を使い、王家の者は直接市民を守ります。
王子が持っていた能力は………。
女の子はみんな、お姫様だと言います。でも、そういえば、お姫様ってどういう人でしょう?
王子や騎士に守られる存在?いえいえ…これからは、お姫様だって凛々しくないと。
いつも弟の事を構う小さな姉、マナフィーゼ。
喧嘩ばかりしている隣国の幼なじみ、みさら。
謎の多い種族の娘、シャンレナ。
そして、異世界から来たという千名希。
個性の強い姫達に囲まれ、ちゃらんぽらん王子も一緒に凛々しく変わる事ができるのでしょうか?
そして、エロいだけの王子は、恋を知る事ができるのでしょうか?
・『血鳴』について
この世界では、誰もがそれぞれ血の中に力を秘めていると言われています。
その力を言葉によって引き出す事を、血鳴と呼んでいます。
誰もが持っていても、力として使える人間は一部の者。そして、その一部の者は
国際警備隊にスカウトされ、市民を助けるために使う事を求められます。
力を発動する時は、まず、自分の血液を使って言葉を書きます。
(何に書くかは、場合によって変わります)
それぞれの人間が決めた言葉(解詞(かいし))という呪文のようなものです。
文字として記した上の文を含め、全文を口頭で発音します。
手を合わせる事をキッカケに血文字が発光し、血液中の不思議な力を呼び出します。
この世界の人間は、血液に鳴素と呼ばれる成分を持ち、
人種によって微妙に種類の違う能力と色が現れます。
各国民の肌の色が違うのも、このためです。
特集:
姫さま凛々しく!